脱臼した件/小室川谷

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月末に北海道日高の泳ぎ沢へ行く計画があり、そのプレ山行として柴倉川西沢へ行く予定が、天気による転進の結果、小室川谷に1泊と予定が立った。前日の雨で多少増水していたが、現地を見たリーダーのYさんが、遡行できると判断して入渓。先輩の判断はさておき、やっぱり水量多いなあ、という印象。水圧に負けそうなところもあり、スクラム徒渉を交えて遡行。Yさんは滝壺に落ちたらヤバそうな滝も、釜を泳いでいって取り付き、果敢に攻めていた。

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落ちたらヤバそうな滝壺

その姿を見た私とNさん、とても追う気になれず、嘘でしょ!?気合いが違う!と叫び躊躇。結果、Nさんが引き返してきたので良かったが、もし突破されていたら私たちも行くことになっただろうなあ。。この水圧にこの釜の流れは、怖い。

 

ゴルジュもかなり流れが強くて危ないので、大きく高巻いて空中懸垂をし、ゴルジュの中洲へ降りて突破。右へ左へ釜の中へ、と活路を見つけながら遡行を続けた。

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ゴルジュ

そして12時頃、私の左手に異変。

小指が手袋の中でブラブラと不自然に揺れていた。

 

手袋を取ると、指の形がおかしい。横にいたNさんに指を見せ「これ曲がってる?」と聞くと、「曲がってる!どうする?進むと戻れないよ」と言われ、何気なく指に触れると、激痛。沢の水で冷やして!とNさんからの指示。先の方を偵察に行ったYさんを呼び戻し、事情を説明。脱臼かな、でも折れてたら大変、と即座に下山決定。水から手を出し、石と割り箸で添え木にしてテーピングをしてもらった。私の荷物はYさんとNさんで分散してくれ、私はほとんど空のザックを背負った。

 

下山は簡単ではない。苦労して越えたゴルジュや激流をどうするか。高巻きで行こうと右岸左岸とウロウロするも、時間がかかりすぎる。いっそ水線突破に切り替えようか、いややっぱり高巻きで、と方針が何度も変わった。

 

しばらく左岸を高巻いていたが、左手を使えないのに左岸はキツイ。ガレガレで浮石だらけ、木は触るとすぐ抜けるほどに斜面が脆い。地図を見ながら何度も考え、やっぱり水線を行こう、と歩き始めたとき、左岸の先に不自然に整った道が見えた。なんと、水道局の巡視路。奇跡だ!と言いながら、1時間半ほどで15時に下山。この道がなかったら、4~5倍の時間がかかっていたに違いない。

 

下山中に痛みは引いた。痛み止めが効いたか、折れていないのかも、と思い、荷物持ちます、もう大丈夫と、小柄な身体に異様な大きさの荷物を背負ってくれているYさんに何度か言ったが、これも訓練だからと断られ、結局最後まで持ってもらった。

 

YさんNさんの2人はせっかく1泊予定で来たのだから、どこか転進か、山行を続けてください、私はバスと電車で帰りますと言ったが、「絶対にそれはない」と即答。救急病院へ連れて行かれた。レントゲンを撮ると、脱臼したが元に戻っていて、脱臼した際に関節の靭帯が伸ばして損傷した、とのこと。全治1〜2ヶ月。若い人だと週間、との診断。待合室の先輩方は一安心。1ヶ月後の日高までに治します、と絶対安静を誓ったのであった。

 

それにしても、いつ脱臼したのやら。思いつくのは、ザックを背負い直す際にバランスを崩し、ザックの全重量が小指1本にかかって、パキッと持って行かれたのかも、ということ。気をつけよう。

 

この日、別パーティに重大事故が起きた。事故箇所など詳細不明だが、いくつかの滝やゴルジュは、とても荒々しく危険だった。